なぜ国は矛盾だらけのキャッシュレスを推進するか

  • 投稿日:
  • 更新日:2020/08/08
  • by
  • カテゴリ:

国が進めるキャッシュレスポイント還元事業が6月30日で終了しました。

creditcards.jpg

人には費用を払わせ、自分は費用を払いたくない政府

キャッシュレスはクレジットカードでも電子マネーでも、費用がかかります。

たとえば、消費税別で100円で何かを買っても、売主に100円が入るわけではなく、手数料を抜かれます。

売主がカード会社や電子マネー会社に支払わなければならない手数料は決済額の1%-5%程度。100円だったら1円〜5円程度(+消費税)が抜かれてしまうわけですね。

手数料の多寡を置いておけば、この仕組み自体は不思議ではありません。

問題は、キャッシュレスを推進している当の国側です。

事業は国が進めているものです。

では、税金など国に収めるお金はどうかと言うと、基本現金を要求しています。

自動車税も、固定資産税も、銀行やコンビニで現金で支払うのが普通です。

所得税や住民税も、会社員だと給与控除で支払ったと言う実感がない方が多いですが、クレジットカードや電子マネーで支払うことはまずありません。

国は手数料を払いたくないんですね。

実は、税金をキャッシュレスで支払う仕組みはあります。

モバイルレジLINEPayなどです。

これは、CAFISという公金決済プラットフォームを使います。

ところが、通常お金を受け取る側(自治体など)が支払わなければならない手数料を、この仕組みでは税金を支払う側が払わなければなりません。

矛盾を感じませんか。

クレジットカード会社は通常手数料を支払う側に負担させることを禁じているのに、なぜ税金支払いのときは支払う側が手数料を払わされるのか。

またそもそも、国は自分は手数料を払いたくないくせに、なぜ人にはキャッシュレス勧めるのか。

キャッシュレス推進の本当のところ

これは、国のキャッシュレス推進の目的を理解すればごく自然なことです。

キャッシュでの決済いちばんの問題は、「匿名性」です。言い換えれば「お金の流れが記録できないこと」です。

キャッシュには名前が書いてありませんから、支払った時に「誰が支払ったものか、誰が受け取ったものか」というのをあとから追いかけるのは至難の業です。

税金を計算し徴収する政府としては、これはとても困ります。

お金を受け取った記録があれば、その金額を元に所得税やら消費税やらをカンタンに計算できます。支払った記録も、会社や事業主が計上した費用が正当なものかを確認するのに使えます。領収書のような紙切れよりもよっぽど確実です。

もちろんキャッシュレスならマネーロンダリングなどの犯罪性のあるお金の動きを追いかけることも可能となります。でも、このことは犯罪者もわかっているでしょうから、キャッシュレスの仕組みを使うとは思えませんが。

ということで、国がキャッシュレスを推進する理由は「お金の動きを見える化して取りっぱぐれをなくすこと」です。

一方で国が受け取るお金は最初から見える化する必要がないので、「手数料を支払うキャッシュレスを導入するモチベーションはない」ということになります。クレジットカード会社の規定を細かく調べていないのですが、税金支払いの時は手数料の扱いが違うのでしょうかね。

やれやれ。

どっちにしてもクレジットカード会社やCAFISを持つNTTデータは儲かる仕組みです。まさに漁夫の利ですね。

こちらもよく読まれています