なぜ日本の消費税10%は高いのか

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  • 更新日:2019/09/07
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消費税が増税されます。

今回の特徴は、何といっても軽減税率が導入されることでしょう。会計処理が大変ではありますが、消費者側の工夫次第で税率を抑えることができるからです。

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イギリスの消費税率は20%!

私のイギリス在住時代、日本の消費税に相当するVAT (Value Added Tax: 付加価値税)がありました。

その税率、日本よりだいぶ高いです。私が住んでいた時は一時期リーマンショックの影響で15%に下げられていた時期もありますが、現在は20%です。

いずれにしてもずいぶん高いと思いますが、実は、何でもかんでも20%なわけではありません。

これから日本が導入する軽減税率が、既に幅広く導入されていました。

課税の仕組みが複雑で課題もあるイギリスの軽減税率ですが、日常の暮らしの上では逆進性(所得が低い人が税率が高くなってしまう消費税などの間接税の性質)がかなり緩和されていると感じられました。

その軽減税率は「0%」または「5%」となっています。つまり、基準となる税率は20%だけど、指定された物品に関しては0%ないし5%だということです。

0%のものは食料品(例外はいろいろありますが)、書籍、衣料品、電車の運賃などです。また、5%のものもあります。

20%でも暮らせる理由

そのため、実効税率、わかりやすく言えば結局どのくらい自分が払っているかが問題になります。

実のところ、普段の生活では20%を払い続けるという事態は多くありません。

私の肌感覚では、普段スーパーで食料品の買い物をする限りは、ビールなど20%の課税商品が買い物かごに混じっていても、だいたい総額の5%ほどでした。

非常に荒くいってしまえば、食料品に関しては、「材料を買って家で調理する」ということであれば税率は限りなくゼロに近くなるのです(実際には電気やガスなどが軽減税率の5%なので、ゼロにはならない)。贅沢をしてレストランで食べたり、デパ地下で食事を買って帰れば、20%を払う羽目になります(日本と違ってテイクアウトでも温かい食事は20%)。

また、ホテルやレストランなどのサービスは常に20%フル課税されますので、外出や旅行などすれば高く感じられますし、同様にサービスを受ける機会が圧倒的に多くなる旅行者にとっても高いと思います。

軽減税率の意味を何もわかっていない日本

さて、この軽減税率ですが、日本では甚だ疑問な仕組みになっています。

軽減税率は先に書いたように、消費税の逆進性を緩和するための措置のはずです。そのため、イギリスでは「(収入が少ないので)贅沢をしない」ということ、たとえば加工食品を買わずに材料から調理するときの食品、子供用の衣類、医薬品、生理用品、上下水道など、収入によらず生活に必須なものをできるだけゼロ税率にしています。

翻って日本の軽減税率。今回初導入なので至らない部分があるのは仕方ないのですが、「飲食料品と新聞」というあたり、生活実態を全く鑑みていないように思います。先に挙げたような子供の衣料だの医薬品だのも軽減税率にならないのに、新聞だけ軽減、そして一般書籍は軽減ではない(まぁこれは単に新聞社の批判記事を書かせないためで、週刊ポ○トや週刊SP○!に何を書かれても平気なのでしょう)といったような、相当にチグハグな制度になっています。もちろん欧米でも新聞を軽減税率にしているところはありますが、その場合他の出版物も同様に軽減なのですよね。

というようなことを見ていくと、欧米諸国の課税の考え方を何も調べずに導入したのか、バkなのかと思ってしまいます。

いや、そうではないですよね。

要は、「国民(と新聞社)の批判をかわすために形ばかりの軽減税率を導入した」というのが実態でしょう。つまり、軽減なんてどうでもいい、ていうかむしろ導入したくなかった、と言うのが本音なのではないのかと勘ぐってしまいます。

そもそも、日本の税率は軽減といっても8%据え置き。スーパーで買い物をしても実効税率が8%より少なくなることはないでしょう。

そのため、贅沢をせずに一所懸命材料を買って自炊するようにしても、日本の消費税制度のもとではイギリスのVATより高い税金を払わされることになるのです。

今後増税はこうすべき

今後日本の消費税が12%、15%、20%と上がっていく可能性は十分にあります。

それ自体はある意味仕方ない部分もありますが、税率をあげるのであれば、軽減税率の範囲や税率をもっと幅広く設定すべきです。

これは例えば、サービスに関する税率は上げる、生の野菜などの食料品に関しては思い切ってゼロ、または3%〜5%程度に低く設定する、といったことです。

サービスに関する値段が高いイメージのあるイギリスですが、課税税率の面から見ても裏付けられています。

私はイギリス以外のことはあまり知らないのですが、サービス関連に重く課税するイギリスの課税の仕方は、ある見方をすれば、(国外からの)旅行者から多めに取っているように見えなくもありません。税率が高くても、これはこれで、生活者を守り外貨を稼ぐというそこそこ納得できる理由になるのではないでしょうか。

政治家も、論点が「消費税を何%にするか」ではあまりにお粗末。もっと丁寧な議論をするべきだと思います。

今の日本の消費税も、今後税率が上がったとしても、このように生活者の工夫次第で支払税率を下げられるような仕組みになってほしいものです。

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