コロナウイルス収束後に世界はこう変わる3つのこと

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  • 更新日:2020/04/19
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新型コロナウイルス(COVID-19, SARS-CoV2)が猛威を振るっています。

世界中で刻々と状況が動いていますが、今回の事例は世界を新たな段階に変えてしまうのではないかと思えるほどのインパクトが感じられます。

そんな、「世界の新たな段階」について、考えてみました。

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1.「働き方改革」が死語になる

日本では「働き方改革」の掛け声のもと、長時間労働を是正するだの休暇取得率を向上するだの様々な施策が提案されたり、実際に行われたりしています。

さて、コロナウイルスの猛威で人々は通勤を控えるようになり、テレワーク(リモートワーク)が一気に普及してきました。私の周りでも、テレワークを行なっている方は業種を問わずどんどん増えています。特に、感染者が出た企業はオフィスを消毒するなどの関係で当面オフィスに行くことが物理的にできなくなっています。

これまで、「朝早く満員電車に揺られて出勤し、夜にやはり満員電車に揺られて帰宅する」という慣行が飽きもせず何10年も行われてきたわけですが、 10年単位でかかると言われているこの慣行の変化がこれだけの短期間(ほんの1〜2ヶ月!)で実現されてしまうというのは驚きです。

もちろん、「働き方改革」は労働時間の問題だけではないのですが、「オフィスに行けない」というこの変化により仕事のやり方をどうしても見直さなければいけなくなりました。

「働き方改革」は他にも様々な論点があります。正規・非正規格差や、高齢者就労などです。

しかし、「オフィスに行かずに仕事をする(しなければならない)」という変化が所与のものになってしまった場合、他の問題に対して光が当たるでしょうか。

コロナ問題が収束する頃には「働き方改革」という言葉自体が死語になっているという懸念があります。そもそも「働き方改革」が提示していた他の諸問題は、別の形でハイライトしなければならなくなっているような気がします。

もう一つ働き方改革の関連ですが、日本の場合、「便利すぎる」ことが当たり前となっています。コンビニは24時間営業しているし、宅配便は1時間の枠で荷物を届けてくれます。

今回、東京や大阪をはじめとした外出自粛要請などにより、デパートや外食産業をはじめとして商業が相次いで営業の短縮や休業を決めています。

確かに不便ですが、安全には代えられません。この結果、一部の店舗や曜日、時間帯などにおいては「休んでも大して変わらない」ことが判明するのだと思います。お客さんにとっても、店舗側の人にとっても。

たとえばコンビニが夜間お店を開くのは、「夜間開いていると昼間の売り上げが大幅に増えるから」です。これは一見逆説的なようですが、実際に夜間の売り上げは微々たるもので、「夜間の売り上げが貢献するから夜間開けている訳ではない」のです。理由ですが、「夜間も含めいつでも開いている」ことが安心感となり来客数が増えているためと説明できます。でもそれは、言い方を変えれば「夜間は開けなくても本質的に大きな不便はない」ことを意味します。人々が「夜間は開いていなくても仕方ない、そういうものだ」と言うことを受け入れてしまえば、夜間開く理由はなくなるのです。

実際1980年代まで、24時間営業の店なんてほとんどなかったのです。これは日本が1990年代バブル期以降の不況の中で延々と「利便性向上の道」を突き進んできた中で陥ってしまった隘路と言えます。もはやこれまでのやり方では利便性向上に残された余地は大きくはなく、何をしてもただただ働いている人が疲弊していくだけです。

「外出自粛」「移動自粛」といった強制イベントの中で、これらの利便性についても再考を求められているのではないでしょうか。

2.国別高齢化率ランキングが変化する

コロナウイルスの予後は、これまでのインフルエンザなど大流行した疾患と少し違う特徴を持っているようです。

従来、この手の病気の死亡率は子どもと高齢者が高いという、U字のカーブを描いていました。ところが、今回は10歳未満の死亡数は低く、高齢者の死亡率がとても高くなっています。

特に、高齢化率が高いイタリアが悲惨な状況です。厳格な外出制限で死亡者数の伸びは少しづつおさえられてはきましたが、それでも感染者8万人以上で死亡者8,000人以上(2020年3月27日現在)と、深刻な状況であることに変わりありません。

医療従事者の数も、病院の病床の数も足りないのです。特にICUの不足は深刻です。COVID19は肺炎を起こすため、重篤化すると酸素吸入器やエクモ(ECMO)と呼ばれる人工肺などが使えるICUが必要です。高齢者は他の既往症があったりする関係で治療に時間がかかることが多く、ICUの利用期間も長くなりがちです。その間に救えたかもしれない他の命が失われる可能性もあり、医療現場は毎日絶望的な選択を強いられていると言います。まさに「誰を生かし、誰を見殺しにするか」という、まるで戦争や地震の際のトリアージと同じことが行われているわけです。

そんなイタリアの高齢化率は24.0%(65歳以上)で世界2位。何を隠そう、日本の高齢化率が断然世界一等賞(28.5%)です。財政危機で医療予算を減らしまくり、医療崩壊に至っているイタリアと日本は同じ状況ではありませんが、台所事情が苦しいのはどこも同じ。日本でも病院をはじめとして小規模なクラスターが発生しており、予断を許さない状況です。

イタリアでは、先ほどのトリアージで80歳以上の治療を諦めるという話もあります。

こうなると、不謹慎な話ではありますが、コロナウイルスのせいで高齢者が多数亡くなって国や地域としての人口構成に変化が生じるということも、あながち荒唐無稽な話でもなくなってきます。

3.環境問題は鎖国で解決し多極化社会へ

今回、実質的に世界経済の動きがストップしています。

オーストラリアやニュージーランドを始めとして、各国は鎖国を始めていてグローバルな人の移動が極めて少なくなりました。国によっては、国内の移動までもが禁じられています。日本も例外ではなく、とうとう東京や大阪で外出や移動の自粛が首長より要請されるようになりました。今後日本でも、新型インフルエンザ等対策措置法や感染症法を根拠として、より厳格な都市封鎖措置が出される可能性も否定はできません。

新型インフルエンザ等対策特別措置法
新型インフルエンザ等対策特別措置法
新型インフルエンザ等対策特別措置法

これら「移動禁止」の動きにより、中国で空気が綺麗になったり、ベネチアで観光客がいなくなって水が澄んだりという事態が発生しています。

人間の経済活動がいかに環境に悪影響を及ぼすのか、いみじくもわかってしまいました。

言い方を変えると、環境問題を解決するにはどうすればいいか、やればできるじゃん、ということがわかったわけです。まぁ、グレタ・トゥーンベリさんに指摘されるまでもなく、みんな「わかってはいるけど、そんなの無理だよね」と思っていた、ということでしょうけど。

さて、グローバル化に逆行する、という意味ではトランプ大統領やBrexitに代表されるような近年の国粋主義が挙げられますが、これらは「他国を出し抜いて自国のみがいい思いをする」という意味での反グローバル化の動きでした。

一方で、鎖国は「他国との関係を減らして自国を守る」という、違った意味での反グローバル化です。今までは時代に逆行するとして歯牙にもかけられなかった「鎖国のメリット」がこれから明らかになるにつれ、「グローバル化」の功罪が問い直されるのではないでしょうか。

さらに、グローバルな経済活動によりウイルスも広まり、環境も汚染されるのであれば、できるだけ経済(というかヒトやモノの移動)を国内や地域などローカルで完結するしかありません。

自給自足ですね。

国や地域のレベルで自給率を高めたいのであれば、歴史を紐解けばいくらでも例は転がっています。日本なら江戸時代とか。

とはいえ、江戸時代をそのまま再現するわけにもいかないでしょうから、そこをテクノロジーでなんとかしようとする人はいくらでもいるでしょう。変化はビジネスチャンスでもあるわけです。地域内と地域間の需給をマッチングさせるとか、これまでなかったようなリサイクルを実現してしまうとか。

そして、地域や国内で経済を完結させる動きが大きくなれば、米中2強に意味がなくなって、社会は多極化するのではないでしょうか。

日本国内だったら、東京への一極集中を弱める圧力になると思います。テレワークでどこでも仕事ができますし、食料やエネルギー自給率の低い東京にわざわざ集中しなくてもいい、と思う人たちが出てきても不思議はありません。

とはいえ、人口が減少しつつある日本で全国津々浦々に人が分散するとも思えません。一定の人数が集まっていないともはや経済的に成り立たないからです。

日本は人口が減少しており、2050年には総人口は1億人を割り込んで9,500万人程度になってしまいます。そのころは「魅力的な地方」ごとに多数の人口集中地域ができているのではないでしょうか。その勝負は、たぶんもう始まっています。