ザ・ヒューマノイド 大脳と心、および知識

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  • 更新日:2015/08/22
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「完成された」人間的なヒューマノイドを目指して

人工知能に関係する本をもう一つ読んでみました。ヒューマノイドを研究する筆者が目指すのは次のような「自立型ヒューマノイド」です。

常にやさしい心と倫理観を持ち、自らの意志で自分の感情をコントロールしながら、過去の経験や学習における長期記憶データと比較することにより一貫性のある思考ができ、その思考に基づいて自己判断した結果が最良の行動となって表れるヒューマノイド

これって、人間的にも極めて完成されている部類というか、むしろ聖人君子な感じだと思いますが。

脳のはたらき

本書では、認知脳科学的なアプローチで脳の働きを解説し、コンピュータで人工的に再現する方法を模索しています。

まず、ヒューマノイドの外観的特徴と機構の側面について解説しています。機構的な部分についてはかなり進化していることがわかります。これは小脳の運動機能や平衡感覚にかかわる調節機能が関与するので、小脳の機能については解決済み、としています。

右脳と左脳の機能については、処理によってどちらの方が優位に働くかという違いはあるものの、片方だけですべて何か(例えば言語処理)を行っているというわけではない、ということです。

ヒューマノイドを作るために必要な運動機能および計算機能(左脳)についてはかなり研究も進んできましたが、アイデアやひらめきを担当する機能(右脳)や心を表現する部分についてはまだ研究があまり進んでいません。そのために、新しい論理のコンピュータ(カオス型コンピュータ)が必要であると説いています。

結局カオス型コンピュータとは?

本書で何度も何度も言及する「常に心優しい対応ができる新しい論理のカオス型コンピュータ」なのですが、結局詳しく記述されていません。その意味で消化不良なので、技術的に深く知りたい人にはあまり向きません。

なお、カオス型コンピュータについてはキーマンズネットの解説が簡潔にまとまっているので、参考になるでしょう。要は非ノイマン型コンピュータの一種で、ニューロンモデルを素直にハードウェア化したもののようです。

本書は脳の働きを科学的に論じつつコンピュータに対応させながら議論しているため、コンピュータを知る人が脳の概観を捉えるのには良いでしょう。

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