ハーバード・ビジネスレビューBEST10論文

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  • 更新日:2023/10/01
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厳選された経営論文

ハーバード・ビジネスレビュー(Harvard Business Review、以下HBR)といえばハーバード・ビジネス・スクールの機関誌として刊行されている経営論文誌ですが、世界的にも質・権威ともに高い論文が多いことで有名です。

日本ではダイアモンド社が翻訳を月刊で刊行しています。たとえば2015年7月はメディアの未来が特集 (書籍リンクはAmazonへ、以下同様)です。

今回読んだ本はその中でも過去の論文から厳選した10本を載せた本です。もちろん(?)日本語に翻訳されたものです。

本書自身は2014年9月に刊行されました。

色褪せない質の高い論文

掲載されている10本の論文ですが、HBRにおける最高権威ともいえるマッキンゼー賞を取ったものは3本しかなく、それ以外は通常のHBR掲載論文です。それでも、読んでいてうならされるものが多く、HBRの質の高さが伺えます。

いくつか簡単に紹介します。

"イノベーションのジレンマ"への挑戦

イノベーションのジレンマ(原題: Innovator's dillemma)といえばクリステンセン氏の論じた今や常識ともなっている理論ですが、どうやって大企業に破壊的イノベーションをもたらすことができるのか、自分の提唱に挑戦した2000年の論文です。

ブルー・オーシャン戦略

これも「ブルー・オーシャン」「レッド・オーシャン」という言葉は聞いたことのある人が多いと思いますが、それについての2004年の論文です。サーカスを芸術に高めて他との競争とは一線を画したシルク・ド・ソレイユを例にとりながら、既存市場のみで戦うことの難しさを説いています。

マーケティング近視眼

本論文はマッキンゼー賞受賞論文ですが、書かれたのはなんと1960年。半世紀以上も前の話です。しかし、成長産業など存在しないという鋭い考察は、現代のリタ・マグレイスが「競争優位の終焉」で書いた内容となんと重なることか!

コア・コンピタンス経営

C・K・プラハラッドとゲイリー・ハメルによる1990年度マッキンゼー賞受賞論文。この言葉も人口に膾炙しましたし、その後の経営論に大きな影響を与えました。事例はNECとGTEの明暗を分けたところから入る関係で、2015年現在の企業状態をベースにこの論文を評価するのはフェアではないですが、それでも多くの示唆を与えてくれます。

翻訳も質が高い

私は専門家ではないので大きなことは言えないですが、有名なコンセプトが提唱された論文が多数掲載されていることからも、経営論の入り口として読んでみるのもお勧めです。翻訳も自然で、各論文ともじっくり読んでも1~2時間程度で読めますし、論文だから難しそうという先入観をなくしてみれば、なるほどと思える点も多いです。

あと、巻末に1959年に創設されたマッキンゼー賞受賞論文のリストが載っており、邦訳の有無も記載されているので、さらに読んでみたい方にも参考になるでしょう。

企業でマネージャや経営層を勤める人や、起業を目指す人などにぜひお勧めです。

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