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車の購入(Sep. 26, 2001)

車を買った。1995年 HONDA Accord Wagon EX(2.2l)。わざわざアメリカまで来て何故に日本車かというと、ちょっとだけ理由がある。

まず、日本人から個人売買で買っているため、選択の幅が狭いこと。たまたまこの車がsaleされていた、というのが車種選定の大きな決め手になる。もちろん中古車屋で普通に買うこともできるのだが、いろいろ問題がある。例えば、価格。アメリカでは中古車はあまり値段が下がらない。Kelley Blue Bookなどの価格情報サイトがあってここで調べると分かるのだが、新車時からだいたい年間$2,000ずつ下がる、という感じ。価格にはRetail(販売店価格)とTrade-in(下取り価格)があり、この双方を調べられるのだが、個人売買の相場はこの中間。まぁ販売店による保証などがないからこのくらいが妥当ではあろう。次の問題として、車がない状態で販売店に行くことが困難。販売店自体はたくさんあるのだが、あまり便利な場所にあるわけではないので、そこまで何らかの交通手段を使っていかなければならない。車であちこち連れて行ってくれる親切な友人がいれば別だが、そうでない場合バスや自転車等でこれらの店を回るのは結構きつい。だいたいどこにあるかも調べなきゃならないしね。
まぁ、アメリカではムービングセールが盛んなので、日本人以外から個人売買で買うという手もある。ただ、ものが高額なので、なるべく日本人相手のほうがトラブルも少なく良いだろうという事勿れ主義的な発想が売り手買い手双方にあり、日本人同士の自動車売買市場を下支えしていると思う。

次の理由として、日本車以外(特にアメ車)は壊れやすい。お前そりゃ昔のことだろうと思ったアナタは甘い。ここで中古車を買い、そのたびごとに故障して乗れなくなり、2〜3台乗り継いだ挙句最終的にカローラを新車で買ったという人を知っている(この車は帰国まで何のトラブルもなかったそうだ)。他にも日本車以外を買って苦労している人がいる。もちろん何のトラブルもない、という人もいるわけなんだけど、確率的には日本車の安全性は高い。
ところでカローラと言えば、ここでの人気車種はカローラカムリだそうで、この2車種だと帰国時にも売れ残ってしまうような心配はまずないそうだ。ただし相場も高いのでそのつもりで...。

まぁそんなわけでアコードワゴンを買ったのだが、アメリカで車に乗るまでには単に車を購入するほかに、いくつかの手続きを踏む必要がある。

まず、免許。当然免許がないと車の運転はできない。免許には国際免許と現地の免許がある。国際免許は有効期間1年。日本にいる間に警察署または管轄の運転免許センターで交付してもらう。私が交付を受けたときは手数料が2,650円だった。国際免許の交付で少し気をつけなければいけないのは、有効期間が「交付の日から1年」ということである。渡航の日を指定してその日から...というわけにはいかない。よって、私のように在住期間が1年とかいう場合は、ぎりぎりになってから交付を受けに行く必要がある。なお、運転免許センターだと即日交付(受付から発行まで2時間くらいだった)だが、警察署で手続きを行うと2週間ほどかかるそうだ。
そして現地の免許。私は持っていない。これは州によって法律が違うので一概に論じられない。私のいる州(PA)では、国際免許の有効期間中は国際免許の使用が可能なので、私などは特に取らなくても大丈夫だが、州によっては居住から半年経ったら必ず取る必要があるところなどもあるようなので注意が必要である(詳しくは知らない)。また、免許試験もいろいろで、PAでは「健康診断」があるというのが特色と言える。州によっては日本語訳の試験問題を用意しているところもあるそうだ。試験自体は総じて(日本に比べれば)簡単なようである。

そして、購入に伴う手続き。以下が必要となる

私のように個人売買で車の購入をする場合、

も必要である。いずれにしても、AAAでは様々なサービスを行っているので入っていて損はない。あ、ちなみにAAAは日本でいうところのJAFである。私はJAFに対するイメージが悪いので(脱税?してたりするんだもん)どうかと思ったが、AAAはJAFよりサポート範囲が広範な気がする。車の譲渡手続きもそうだが、普通役所がやりそうなこともやってるし。ナンバープレートとか、AAAが発行しちゃってもいいのかなぁ。

さて手続き。まず車の購入が決まったら、保険の加入を行う。このとき、JALファミリークラブが提供している海外赴任者総合保障制度にあらかじめ入っておくと非常に便利。どう便利かと言うと、保険の加入手続きをほぼ代行してくれる。拙い英語で保険屋に電話しなくても済むのでとても助かる。ただ、他の日本の方に聞いてみたらこれも係の人によるらしい。というのは、この保険加入代行、現地のトールフリーダイヤルに電話して「保険の加入したいんすけど」と言うのだが、このときの対応が係の人によっては単に電話を保険屋に転送するだけということもあるというからである。まぁそれでも信頼できる保険屋に転送してくれるだけましなのだが(日本人で国際免許を使い、こちらで運転経験がないとものすごく高い保険料を請求されることもあるらしい)。私の場合、係の人がよかったのかすぐにFAXで日本語説明つきの申し込み用紙を送ってくれた。これに自分の情報と購入する車の車種、車台番号、安全装備、希望する保険の保証額(車両保険がいるかとか、免責とか)の選択などを記入し、送り返す。するとしばらくして見積もりを送ってくれる。見積もりは2種送られてきた。Full TortとLimited Tort。これは万が一裁判になったときに、いかなるときにもサポートしてくれるか、致死傷など重大な事故のときのみサポートしてくれるかの違いらしい。とりあえず私は車両保険つき、Limited Tortにした。これを先ほどのトールフリーダイヤルに電話して伝える。すると保険会社とAIGの係の人の電話回線につながり、保険証の番号を聞かされる(これ必要なのかどうか謎なんだけど)。しばらくすると仮のIDがFAXで送られてくる。結果的には英語を一言も喋らずに保険加入手続きが完了した。

ちなみに海外赴任者総合保障制度だが、これはAIGという保険会社が提供する保険をJALファミリークラブが再販しているもの。この基本プラン(年間45,000円)に、「自動車超過損害賠償責任保険」というがついている(基本プランは基本的に損害賠償責任保険である)。アメリカでは保険の保証額が低く(たとえば対人1事故につき$300,000とか)、日本のように「無制限」といったものがないため、アメリカの保険でカバーしきれない部分をカバーするのがこの保険で、通称「アンブレラ保険」と言われている。ちなみに自動車事故の場合、この保険により最大2億円までカバーされる。
では直接AIG扱いにせずわざわざJALファミリークラブに入るのはなぜか。それは、AIG(正確には日本の子会社のAIU)が提供する保険はこの基本プランに海外旅行傷害保険を加えたプランしか加入できないためである。このセットプランは12万円くらいしてしまう。そこで基本プランだけ入りたい場合はJALファミリークラブ扱いのものにするのである。ただ、その場合、

と3段構えで加入しなければならず、かなり煩雑。手続きも急いでも3週間、通常1ヶ月くらいかかるので、余裕を持って申し込んでおきたい。私は渡航ぎりぎりになってから申し込みを行ったので保険のスタートが遅く、車の購入もずれ込んでしまった。もし一気に申し込みたい場合はJALファミリークラブに電話してすべての書類を送ってもらう。JALカードの方に電話すると「カードの送付が海外に赴任されたあとですので、ゴールドに入る必要がありますね」などと言われてしまう。なぬ? ゴールドカード(年会費10,000円)に入れとな? でもそのあとファミリークラブに電話したらその点について何も言われなかったので渡航日だけ伝えて通常カードに加入。そうしたらちゃんと海外住所に送ってくれましたよカードを。なんだか隙あらば上位カードに加入させようとするJALカードの本意見たり!

さて車の保険証書は1〜2営業日でFAXされてくる。これを受け取ったらいよいよ譲渡手続きを行う。

最寄りのAAAのオフィスに譲渡してくれる人といっしょに行く。カウンターで「車をこの人にあげるんだ」といい、また「この人はAAAに入ってないから今日入るつもりだ」とも言う。すると、受付用紙を渡してくれる。

ここで用意しておく書類は譲渡する人は自動車の登録証とライセンス、私は保険の証書(FAXで送られてきたものでOK)と国際免許。

順番がくると係の人が呼んでくれた。なにやらたくさんの書類にサインさせられるが、これは譲渡が行われたという記録を作っているらしい。重要なのは、譲渡が「giftである」ということ。最初から「この人に車をあげるんだ」という話し方をしていればよい。売ったと言うと譲渡金額に応じ税金がかかる。ギフトなら譲渡価格は0だから税金はかからない。らっき〜♪
ただ、あまりいい車が譲渡だったりすると、あからさまに疑われる。私のときは「車のコンディションはどうだ」と聞かれたので「Poorだ」と答えた。これでOK。要は「ボロいからあげちゃうんだよ」という雰囲気にしておくということ。まぁもともと私が買った車はかなり古いのでそんなに疑われることもないとは思うが。他に聞かれるのは車の現在のmileageと私に帯同家族がいるかどうか。家族は、AAAの関係と思われる。

そして自動車の名義変更とAAAの料金を支払う。支払方法は現金かチェックのようだ。私は現金をあまり持ってなかったのでチェックを使った。

料金の支払いが終了するとナンバープレートと登録証をくれる。ナンバープレートは自分で取り替える。日本のリベット打ちされたナンバーのことを考えると驚くが、こちらのものはマイナスドライバー1本で外せる程度のもの。しばらくすると正式な登録証が郵送されてくるが、これは車の中に保管せず、家の中などに置いておく。

ここまでで車に乗るのに、車の購入以外にいくらかかったかおさらいしてみよう。

登録料、AAAは1年更新なので毎年必要。また、この他に車のInspection(いわゆる車検)を毎年受ける必要がある。私の車はInspectionが来年7月なので、それまではかからないけど。なんにしても、日本だろうがアメリカだろうが車を持つってのは金がかかるねぇ。

それにしてもこの情報、アメリカに縁のない人には何の役にも立ちませんな。別に面白いエピソードってわけでもないし。ということで、車の運転で気付いたことをちょっとだけ。

こちらでは、交差点などでSTOPサインがあったら必ず一時停止をしなければならない。いわゆる日本の「止まれ」標識と同じと言えばそうなのだが、停止線もないし慣れないと下手すると気付かない。でもこれを無視していくと横からきた車とニアミスしてクラクション鳴らされたりするので注意。こちらでは日本のような「優先道路」の感覚がなく、交差点では早い者勝ちの原則(英語ではfirst come, first served basisというらしい)なので、あまり広くない道路では日本よりかなり注意深く走行する必要がある。

そして、"SCHOOL BUS"には細心の注意を払う必要がある。SCHOOL BUSにはSTOPサインが装備されていて、学生の乗降を行うときにこのSTOPサインからビームを発射...じゃなかった、STOPサインがアクティベートする。このときは、すべての車は動いてはいけない! 同方向の車はもちろん、対抗車線もである。これを破ると(そして見つかると)重い罰金が待っている。ちなみに、アメリカでは弱者に関係する違反の罰は重く、他にも私の知る限りでは車椅子マークのついた駐車場に迂闊に停めてしまった場合も重い罰金が待っている。いや、本当に障碍者乗せてるとか、そういうんならいいんだけどね。

なんにせよ車をゲット。「アメリカは車がないと暮らせない」この神話は、半分本当で半分嘘であった。要は住んでる場所による、ということ。日本もそうだが、郊外に住んでいる場合は車がなければ話にならない。隣の家まで100マイルなんて田舎に行かなくても、都市部からちょっと離れると鉄道はおろかバスもろくにない。でも、都市部であればバスはたくさん走ってるし、自転車でも手に入れればなんとか暮らしていけてしまう。私が実際そうだったし。ただ、いずれにしても鉄道という選択肢はないんだよね〜。ま、この辺の詳しい話はいずれまた機会があれば。

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