なぜトランプは脅威にならないか

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  • 更新日:2016/11/11
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米大統領選で共和党のドナルド・トランプ氏が大統領選で勝利し、「政治経験ゼロ」の大統領が誕生することが確実となりました。

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このことで世界中が震撼しているわけですが、私はそれほど大きなインパクトにはならないのではないかと考えています。

理由は以下の通りです。

公約は達成されない

これまでのどの大統領選でも、候補者は選挙中は様々に公約を掲げます。しかしいざ大統領になってみると、議会の抵抗や状況の変化など様々な理由で未達のものも多数発生するという事実があります。現在のオバマ大統領も様々な公約を掲げましたが、未達も多くあります。

Obameter (オバメータ)というオバマ大統領の公約を追いかけるサイトによると、2期8年間で彼が掲げた500あまりの公約のうち、達成されたものは半分以下の45%です。重要な公約であるイラク及びアフガニスタンとの戦争の終了という公約も達成されていません

意外と常識的?

トランプ氏の選挙中の公約は、一部ですが以下のようなものです。

  • TPPには署名せずNAFTA(北米自由貿易協定)を目指す
  • 中国との貿易関係を改善
  • メキシコ生産品に大幅に関税を課す
  • 年収2万5000ドル未満の単身世帯と年収5万ドル未満の夫婦世帯は所得税を免除
  • 法人税の最高税率を現行の35%から15%に引き下げ
  • メキシコ国境に壁を構築
  • 不法滞在者の強制送還、米国で生まれた不法移民の子どもに市民権を与える制度を廃止
  • イスラム教徒を一時的に入国禁止、シリア難民は受け入れない
  • グリーンカード発行中止
  • オバマケア撤回、医療貯蓄口座制度に置き換え
  • ISを「打ち負かす」ためにロシアとも協力
  • 尋問に関し、拷問を復活
  • 米軍の規模と能力を拡充
  • 日本、ドイツ、韓国、サウジアラビアに対する軍事支援コストの負担増要請

やたら過激な物言いがクローズアップされる氏ですが、一部を除いて言っている中身はそんなに過激ではありません。オバマ大統領の実績に習い半分程度が達成されると仮定すると、都合のいい見方をすれば極めて常識的な内容に落ち着く可能性もあるということです。

進むも地獄、退くも地獄

もちろん国境に壁を構築、イスラム教徒の入国禁止など、過激な公約もいろいろあります。ただ、これらは議会およびアメリカ国民、そして何より国際社会が黙ってないでしょう。結果的にトランプ氏を選んだアメリカ国民も、総得票数で見るとクリントン氏の方が多かったりします。実際にトランプ氏が勝った後も、抗議集会が各地で開かれています。

これから起こりうるのは、次のようなシナリオではないでしょうか。

  • 過激な公約を(たとえばメキシコ国境に壁を建築)強引に達成させ、国民及び世界から大バッシング
  • 過激な公約を引っ込め、公約未達とバッシング

そう考えると、「公約達成でもバッシングで総スカン」「公約未達でもバッシングで総スカン」という進むも退くもの世界になり得るということです。

そして、そのような状態が続けば政権は早期にレームダック化し、大統領の意見はスルーで議会に骨抜きにされ続ける、という状況になるのではないでしょうか。

過激なことを言い続けて当選したツケを払うのはこれからです。振り上げた拳をどう下すか、これから数ヶ月は氏に慎重かつ大胆な行動が求められています。