共有経済と最適化問題

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  • 更新日:2016/05/18
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共有経済(シェアリングエコノミー)が流行っています。

ライドシェアのUberとか民泊と言われるAirbnbとか、聞いたこともある人も多いのではないでしょうか。

Uberの時価総額は410億ドル、Airbnbのそれは240億ドルと、ユニコーンと言われる巨額の市場価値を持つ未公開企業の中でも、特に市場の評価が高くなっています。

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本質は最適化問題

この共有経済ビジネスの本質は何でしょうか。

私は、「持つ者」と「持たない者」の間で一種の最適化問題を解いているのだと考えています。

Airbnbなどのスペースシェアを例にとると、不動産を持っていて空き部屋になっている人がいます。一方で、旅行者など、スペースがテンポラリに必要な人がいます。

リソースが必要な人と余らせている人が利用の平準化を図ろうとするのは、需給のバランスがちょうどよくなるように最適化問題を解こうとしていることになります。

従来、この最適化をホテルという業態が埋めていました。それは、一般の人が一部屋しか持っていない部屋を広告して貸すための金銭的時間的コストが高く、割に合わなかったため、専門の業態を持つホテルがその部分を担っていたためです。ホテルなら専業の力を生かして広告したりするだけでなく、同じ部屋を幾つも持つことで需要の幅にも対処できますし、スケールメリットでコストを下げることも可能になります。

ところが、コンピューティングパワーの増大で場所や条件、金額といった複雑に絡み合った条件をうまく計算して解を出すことができるようになりました。そしてスマホをはじめとしたネットワークシステムが普及し、その解に対してどこからでもアクセスするインフラが整ったことにより、一般の人が持つ不動産をを従来のホテルと同等レベルの条件で広告したり貸したりすることができるようになり、借り手もホテル同等の利便性で利用できるようになりました。

さらには、貸すのは一般人で多くはこれまで死蔵していた不動産です。周辺のホテルより安い値段でかつ中間のAirbnbに手数料を払っても、収入の道ができるということでインセンティブは十分にあります。借り手もAirbnbに手数料を払いますが、ホテルより安く条件のいい部屋を借りられる可能性が高くなります。この手数料のバランスもある種最適化していくことができます。

さらに複雑化した問題も解けるように

今は例えば車のライドシェアや部屋の場所貸しといった単種類のリソースを共有する形式になっていますが、今後はもっと複雑化したリソース最適化問題にチャレンジする企業が出てくるのではないかと思います。

たとえば、ある仕事を成し遂げたいと思ったら、一般論として「ヒト」「モノ」「カネ」が必要なわけですが、これらが完璧な条件で揃うことはまずありません。しかし、「クラウドソーシングによるヒト(ワークフォース)の確保」「シェアリングによるモノの確保」「クラウドファンディングによるカネの確保」がうまいバランスで揃えば、あとは実行する人のやる気次第で何でもできてしまう世界が来そうな気がします。

もちろん、現実的にはこれはかなり複雑な問題ですし、対象領域によっては不可能かもしれませんが、人工知能を含めコンピュータの処理能力的には十分解ける問題になってくると思います。

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