シェアリングエコノミーを生き抜く企業の条件

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  • 更新日:2023/10/01
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現在、AirbnbやUberといった共有型サービスがシリコンバレーを中心に大きくそのビジネスを伸ばしており、日本でもnottecoやDeNA傘下のAnycaなどのサービスがスタートしています。

利用者としては、タクシーより安いUber、ホテルより安いAirbnbは魅力的です。私もシリコンバレーに行くとUberを利用しますが、タクシーより早く来てタクシーより安いため、よく使います。

このような「シェアリングエコノミー」により、提供者と利用者が直接つながっていき、中間業者が一掃されてしまう、既存企業には大きな試練となる時代がもう来ています。この世界で最先端の著書であるJeremy Rifkinの「限界費用ゼロ社会 (Amazon)」では、過去の資本主義経済と決別するときが来ていると説いています。

リソース活用と適正化

このようなサービスが意味するところは何でしょうか。

最初の意義は、効率的にリソースを活用できることです。これは、クラウドコンピューティングに代表されるような「所有から共用へ」の流れと類似のものですが、提供者が一般の参加者であるところが異なります。

例えば日本の都市部では車の利用率は低く、車を所有していても週末しか乗らないという人もいるでしょう。それなら、余剰となっている車の時間を他の人に使ってもらうことにより効率的に使おうという発想です。

これにより、ただ単にリソース活用できるだけでなく、所有者に収入の手段を提供することにもなります。The Economistの調査では、米国でRelayRidesというカーシェアリングサービスを使っている車のオーナーは、平均して月250ドル稼いでいるというデータもあります。

共有を進めると、本来必要量より多く売られていた車という資源が、適正化されます。そのため、車のメーカにとっては収入減になるという話があります。これに対し、各メーカも対策を始めています。たとえば、BMWは、自社の車の所有者にシェアリングサービスで収入を得られるようなプログラムを展開しています。

余談ですが、コンピュータでもこのような共用の技術が昔からあります。SETI@Homeがいい例で、人々がコンピュータを利用していない時間を使って(借りて)大きな計算をするものです。

富の再分配の再定義

このようなリソース配分の適正化が意味するのは、余計なお金を使い、製品を余分に売って余らせることにより企業が儲けるのではなく、「ちょうどぴったり」の量の製品を供給し、時間・空間的に共用することにより無駄をなくす、ということです。

もっと言うと、経済活動における富の再配分を定義しなおしている、ということだと思います。企業が一方的に製品やサービスを提供して利用してもらうのではなく、一般人が提供者になって利用者と公平に富を分配するという発想です。

このことから、AirbnbやUberといった現在共有サービスの提供事業者は、提供サービスの種類の面でも、後述する公平性やサービスの質の面でも、まだシェアリングエコノミーとしては発展途上であると考えています。

シェアリングエコノミー事業者に求められること

現状のサービスを「第一世代のシェアリングエコノミー事業者」と言ったとすると、次の世代の事業者に求められる特性は何でしょうか。

まず、公平性です。

AirbnbもUberも、あちこちで既存のホテルやタクシーなどの事業者から訴訟を起こされています。これらが「既存のビジネスを奪われる」という理由のみでの訴訟であれば、それほど気にする必要はないのですが、意味はそれだけではありません。

Uberを例にとると、現在のサービスは運転者にとって、かなりの負担を強いる仕組みになっています。Uber自身が儲けすぎているという批判もあります。本来、シェアリングエコノミーは提供者と利用者が公平にサービスをやり取りできるべきものです。しかし、現在はそうではないようです。

次に、品質です。

上記で、「ちょうどぴったりの量」と書きましたが、「ちょうどぴったりの質」が担保されていないということも課題です。シェアリングビジネスでは、これまで商品の提供企業が行ってきた品質保証の仕組みが通用しないため、品質保証の仕組みを確立する必要があるわけです。

現在の企業も力を入れているのは、サービスの提供者と利用者の双方が評価をしあうことによるマイルドな監視の仕組みです。例えば、Uberでは利用者が運転手を評価するとともに、運転手も利用者を評価していて、互いにサービスを拒否することも可能です。

これはWeb上のサービスで広く使われている評価の仕組みですが、簡単にだますことのできる脆弱な仕組みでもあり、誰もが納得するもう一歩進んだ品質保証の仕組みが必要でしょう。

サービスからアウトカムへ

共有の流れは、人々が求めるものがモノからコト、つまり結果(アウトカム)を追求してきたことによる帰結であると考えることもできます。

アウトカムとは、その製品やサービスで、利用者が結局何を得ることができるのかです。

自動車を買うことは目的ではなく、移動することが目的です。
なぜ移動するかというと、病院に行くためかもしれません。
なぜ病院に行くかというと、病気を治すためです。
なぜ病気にかかったかというと、...

といった形で目的は連鎖します。

シェアリングエコノミー時代の事業者は、この性質を考え、共有されるサービスを組み合わせてどんなアウトカムが提供できるかを考える必要があるでしょう。そして、そこに大きなビジネスチャンスがあるのではないでしょうか。

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